解決すべき退職理由は本当に分かってますか?
私は美容室の人事に従事しておよそ10年近くなります。そのなかで就職活動している方の話や、店舗内での不満や悩み、退職理由を多く聞いてきました。それらを聞いていると、よくあるテンプレ記事のような簡単なものではないということです。美容業界関連の記事を見ていると多くあるのは
「ハードな環境により離脱者が多い」というものです。
例えば、
条件が違う
レッスンしてくれない
拘束時間が長い
休みが休みじゃない
デビューまでの道のりが長い・辛い
給料が上がらない
入客できない
スタイリストとアシスタントの間に壁がある
体調が悪化
これらもたしかにありますし、サロン側が改善するべき問題です。
ですが、
それらはいきなり表れる訳ではなく、単体で離職に至るのは稀です。
そこに至るまでの本質的なところに目を向けないと絶対に離職は止まりません。
一般的な退職理由は正直な気持ちを言うのも面倒になった故の口上でもあります。
スタッフと管理側の気持ちのずれ
「自分には本当のことを言ってくれている」「自分の頃はもっと大変だった」
「今の時代は恵まれている」「これくらいでダメになるなら先はなかった」
こういうふうに思ってはいけないのはよく聞きますし、
皆さんも気をつけていると思いますが
知らないうちにそういった気持ちが表に出ていたり
完全に切り離せていない方が多くいます。
そう簡単に自分の本質は変えられないものです。「昔の自分とは変わった」「今の子達を理解している」そんなことを言う方でさえ
本質的には変わっていない場合が多くあります。
スタッフは本当の事を言えないものです。信用している上司にも、お世話になっているからこそ直球には言えず小さなサインを出すしかないのです。
サインを見逃さないように普段から傾聴力などを鍛えておく必要があるでしょう。未然に気づくにはそれより前にスタッフと話せる距離感をもつ努力が不可欠です。
「あいつは大丈夫」「普段から話しているから大丈夫」
そんな声はよく聞きますが、幹部クラスのスタッフでさえ「タイミングがあれば辞めたい」そう思っている声をよく耳にします。
「辞めれない」「転職活動が面倒」そんな気持ちで続けているだけの場合もおおいにあり得るのです。
よくあるのが、
オーナー「店の売上も以前みんなで立てた目標を達成したから、また次の目標を立てないとな。みんなには頑張ってもらったから美味しいものでも連れて行くか。」
これがよくある話ですが、これがもうすでにズレています。
目標は今の自分のちょっと上を目指すからスタッフは毎日大変です。
ではなぜみんな頑張れるのでしょう?
それは、自分の為になるからです。
お給料だったり、スキル、経験値など色々個人ごとにメリットはありますが、お店のためや、ましてや目標達成の対価がご飯だったらやらないです。
ご飯にいって今の努力が自分の将来の何に繋がっているか話さないと、「使われているだけ」と感じてなあなあになって行くでしょう。
それがそのうち新しい環境へ動きたくなるきっかけになってしまいます。
スタッフの気持ち
皆さんの店舗で頑張っているスタッフはそんな過酷な状況にもめげず、自分の夢や目的に向かって直向きに美容を続けてきたのではないでしょうか?
では、なぜそのようなスタッフが疲弊し辞めてしまうのか?もっと簡単に言うと
『夢』や『目標』がこの場所にいても叶わないかもしれない
と思ってしまうからです。
この状態は皆さん自身も経験したことがある方も多いのではないでしょうか?
スタッフが頑張ってくれていると「売上」が上がります。
お店やオーナーとしてはその状態が理想的であり、「望んできた状態にやっと到達した」「これを軸にここから更に飛躍したい」
など希望に満ち溢れている状態でしょう。
先述しましたが、何回も言います。
この話をスタッフ目線で考えられるかどうかが
スタッフが長く残ってくれるかどうかのポイントです。
スタッフ個人にも夢や目的があります。
とりあえず売上が上がるまでは「お世話になった恩返し」や「経験値を積む」為に頑張ってくれるでしょう。
「みんないい調子だ」と簡単に思ってしまうと危険です。目標を一つ達成したタイミング。このタイミングで転職を考えている方が圧倒的に多いです。
これは何百人と面談してきたなかで予測ではなく実際に聞いてきた話です。
スタッフはお店の為に働いているのではなく
【自分の人生のために働いています。】
それを常に胸に置き、お店の節目ではなくスタッフそれぞれの節目に話を聞き、自分の店とそのスタッフの夢がクロスするところを見つけましょう。
これから美容師の世界にもスカウト文化なども広まって行くでしょう。
転職も活発化する可能性があります。
そういった一手間の積み重ねが揺るぎない絆になっていきます。